RoboCup2017 Nagoya Japan(ロボカップ2017)
RoboCup2017 Nagoya Japan(ロボカップ2017)
人とロボットが一緒に暮らす未来を
ロボカップ@ホームに参加することで深く考えることができた
玉川大学のロボカップ参加は2006年、ソニーが開発・販売したペットロボット「AIBO」を使った四足ロボットリーグがはじまりでした。2008年からは新設された「ロボカップ@ホーム」リーグに参加しています。世界⼤会では2008年と2010年に優勝、2009年と2012年に2位、ロボカップジャパンオープン(日本大会)では2010年大会まで3連覇という実績をもつ名門です。
長瀬さんは2015年の中国世界大会、2016年のジャパンオープンとドイツ世界大会に参加。ドイツ大会ではイノベーションアワードを受賞しました。
2017年の名古屋大会もトヨタ自動車が開発するロボット「HSR」で競うロボカップ@ホームの「Domestic Standard Platform League」(DSPL)に出場予定です。
- ロボットに興味を持ったきっかけを教えてください。やはりガンダムなどのアニメとかの影響でしょうか?
子供の頃からロボットには特に興味がありませんでした。ロボットアニメなどから受けるロボットの印象は「戦う」イメージが強くて、あまり好きになれませんでした。ある時、テレビでホンダのASIMOの映像を見て、人に寄り添う姿に感銘を受けて「このロボットなら怖くない」「私もロボットを操作してみたい」と思ったのがきっかけです。
文系の高校に通っていたので、大学に入ってからロボットについての勉強や・・、物理や数学などもイチから始めたような感じです。
- 大学に入ってからロボットの研究をスタートしたのですね。 大学での専攻はなんですか?
機械情報システムです。機械系と情報系の両方が学べるので、旋盤を使って機械製作を行うこともあれば、ソフトウェアのプログラミングを学ぶ授業もあります。授業とは別に、認知発達ロボティクス研究室に所属しています。研究室ではソフトウェア研究がメインです。私はロボットの経験がなかったので、研究室ではずっと先生や先輩に教えてもらいながらロボカップ関連の取り組みを行ってきました。
- ロボカップに出場しての感想や実績を聞かせてください
2016年のロボカップ・ジャパンオープンのときに、「ロボナース」(※)というタスクをはじめて任せてもらいました。ロボナースは要介護者とロボットが共に暮らすことをテーマにしたコンテストで、ロボットには初めてトヨタ自動車の「HSR」を使い、私達はプログラムを組んで出場しました。私はそれまでプログラムでロボットをきちんと動かした経験もなかったので、ディープラーニングの機械学習ライブラリ「Caffe」等を教えてもらいながら初めて使ってみたりもしました。いろいろ工夫はして臨んだつもりだったのですが、成績は残念ながら4位でした。
(※2017年のロボカップ・ジャパンオープンや世界大会ではロボナース種目はありません)
トヨタ自動車のロボット「HSR」と長瀬氏
- 4位は悪い成績ではありませんよね?
はい。ですが、大会前に研究室で行っていた練習ではもっとポイントが得られるはずでした(笑)。HSRを初めて使ったということもあって、本番ではトラブルが次々と起こって、練習で思っていたようには力が発揮できませんでした。はじめにロボットがスラム機能を使って自律的に周囲のマッピングを行いますが、会場ではたくさんの参加者がいたり、正確な位置情報が得られなかったりして、そもそも地図がきちんと作成できないなど、基本の段階からつまづいてしまいました。環境要因からのエラーが重なってしまったのですが、本来ならエラーによるトラブルが起こることもある程度予測して臨むべきだったと考えています。4位にはなれましたが、もっと色々と上手くできたんじゃないかと皆で話し合い、とても悔しかったですね。
- 2016年は世界大会(ドイツのライプツィヒ大会)にも出場しましたね
はい。世界大会は電気通信大学さんと共同のチーム「eR@sers」(イレイサーズ)で参加させて頂きました。モノを識別して指定されたオブジェクトをつかんだり、それを別の棚に並べたりといった「マニュピレーション&オブジェクト・レコグニション」のお手伝いをさせて頂きました。それまではトヨタ自動車さんが用意してくれたり、教授に教わったソフトウェアやツールを組み合わせてロボットを動作させることが中心でしたが、ドイツ大会から平面認識などのプログラミングを自分たちで行ったり、コンピュータビジョンでPCL(Point Cloud Libary)を活用したり、自分たちのオリジナルのアイディアを盛り込みながら取り組めたのではないかと思っています。
- @ホームリーグは「棚に置かれたペットボトルを間違えずに人の元へ運ぶ、レストランで注文を受ける、留守番をする」等の課題をこなすことが採点基準になっているのですか?
概ねその通りですが、課題にはある程度のストーリーがあると感じます。例えば、単にモノをつかんで持ち上げるだけでなく、棚に並んだたくさんのモノの中から指定されたものをロボットが正確に認識して、空いている棚に移すこと等を制限時間内に行います。設定がレストランの場合は、人とロボットの協働がテーマになっていて、人の後ろを一定の距離を保ってついてきて、お客様ごとにテーブルの場所を覚えていき、一定時間が経過したら指定されたテーブルに注文を取りに行くなど、ロボットが人と一緒に働くための技術が要求されます。
ロボナースも高齢者を想定した人がロボットに手を降ったら、それを認識して「何かご用ですか?」と用件を聞きに行く等、実際の生活に役立つロボットの使い方を想定し、自律的に動作するものでした。
- レストランのウエイターロボットに必要な技術と、リビングに必要なロボット技術は少し異なると思います。床の材質や置かれているものも異なる可能性もありますよね。ロボットには両方に対応したプログラムを予め準備しておかなければならないのでしょうか。
そうです。レストランは直前になって指定されるので、短時間でレストラン用に切り換えて臨む必要があります。前回はレストランの壁や仕切りが透明のガラスが使われていたので、ロボットに搭載しているレーザーレンジファインダーが正確に動作するかとても心配でした。
■参考動画
玉川大学のHSR。人と一定間隔を保って追尾するデモンストレーション
- @ホームリーグならでの良さは何かありますか?
たくさんあるロボカップの競技の中でも、@ホームリーグには独特な魅力があると思います。サッカーなどの競技では勝敗がはっきりしていますし、観客にはそれぞれ応援しているチームがあって得点すると喜びます。しかし、@ホームリーグは相手も味方もなく、ロボットが難しいチャレンジを成功させると観客みんなが拍手して喜んでくれたり、ロボットが動かないとみんなで残念がってくれる…競争ではなく、会場が一体となったそんなアットホームな雰囲気が好きです。
- 長瀬さんにとって、ロボットとはどういうものでしょうか?
個人的には、ロボットを戦いや競争に使うのは好きではなくて、ロボットは人の暮らしに役立ったり、人に寄り添ってくれるような存在であって欲しいと思っています。しかし、ロボットにはまだ無機質さを感じます。人とロボットが一緒に暮らす日常を近い将来に実現するためには、機械的な印象をもっと少なくしていくべきではないかと感じます。
ロボットから発する言葉も一方的なものではなく、会話のやりとりを行う、本当の意味でのコミュニケーションができたり、握手したときに暖かみや柔らかさを感じたり。人が誰かと一緒にいたり、一緒にいたいと思うときには、コミュニケーションや暖かみは大切なことだと思います。
- ではロボカップは長瀬さんにとってどのようなものですか?
ロボットが家庭に入る未来をイメージした@ホームリーグに参加することで、人に役立つということはどういうことか、ロボットが人と暮らすには何が必要か等について深く考える良い機会が得られたと感じています。私にはとてもプラスの経験になったと感じていますし、就職活動にも役に立ったと考えています。
- 最後にロボカップ2017名古屋世界大会に臨む、今の気持ちを聞かせてください
私は4年生なので個人的にはロボカップの出場は今年が最後のチャンスになると思います。今年のロボカップは日本で開催されるということもあり、チームの士気も上がっています。私は大学に入ってからロボットをはじめて、先生やこの研究室には大変お世話になったので、少しでも恩返しがしたい、そんな気持ちでいっぱいです。
著者・撮影:ロボスタ 神崎洋治(http://robotstart.info/)
[ 長瀬夕佳氏 プロフィール ]
1995年生まれ
⽟川⼤学 工学部 機械情報システム学科
チーム「eR@sers」
2015 年ロボカップ世界⼤会出場
2016 年ロボカップ世界⼤会4位。イノベーションアワード受賞。
2016年ロボカップジャパンオープン4位
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ロボカップ2017名古屋大会事務局
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