RoboCup2017 Nagoya Japan(ロボカップ2017)
RoboCup2017 Nagoya Japan(ロボカップ2017)
壊れずに決勝まで競い抜いたロボットたち
毎試合後に故障やダメージがないかリストを見ながら必ずチェック
「たかはま夢・未来塾」は愛知県高浜市の委託を受けている民間団体です。映画を作ったり、マンガを描いたり、英語やディベート、サイエンス、発明など、子供たちを対象とした教室を運営しています。その中のひとつにロボットの研究や作成を楽しむ「ロボットクラブ」があります。ロボットクラブではロボカップジュニア世界大会への出場を目標のひとつに掲げています。実績としては2007、2008年に世界大会で連覇したほか、ジャパンオープンでも2007、2008、2015、2016年に優勝しています。
宮本さん、近藤さんがチームを組んでいる「Team Takahama Robots」は2016年のロボカップジュニアに出場し、高浜ノード大会で優勝、東海ブロック大会では準優勝、2017年のロボカップジュニア・ジャパンオープンぎふ・中津川大会で優勝しました。
ジャパンオープン優勝の要因は「運が良かった」(笑)
- ロボットに興味を持ったきっかけを教えてください
宮本さん(以下敬称略)
小学生の時、学校で「社会科見学」がありました。街で実際に働く人たちを見たり、仕事を体験する行事です。そのときに「たかはま夢・未来塾」のロボットクラブを見て、ロボットに興味を持って、いつかロボットクラブに入ってみたいと思いました。
宮本圭佑さん
近藤さん(以下敬称略)
テレビのドラマかニュース番組でロボットが動いている様子を観て「僕もやってみたい」と思いました。でも、どうやって始めたらいいのかは解りませんでした。ある日、学校で「たかはま夢・未来塾」のチラシが配られて、そのときロボットのことを思い出して興味を持ちました。
近藤諒歩さん
- ロボットクラブに入ってどんなことをしましたか?
宮本/近藤
ロボットクラブに入ってすぐは、はんだ付けの練習をしたり、LEDを光らせたりしていました。ロボットクラブでは入会したらすぐにロボット競技や大会に出場させてもらえるので、その年にロボットサッカー競技に出場しました。でも、1年目はぜんぜんボロボロでした(笑)。予選は勝ち上がりましたが、決勝トーナメントでは一回戦目でまったく点数が入らなくて負けてしまい、とても悔しかったです。
悔しくて「次は勝ちたい」と思ったけれど、どうやったら勝てるのかが解らなかったです。それでも全国大会に行けたのは運が良かったと思います。
- なるほど。最初の大会は”悔しさ”から始まったんですね。でも、今年はみごとロボカップジュニア・ジャパンオープンの全国大会で優勝することができましたね。どんな工夫をしたのでしょうか?
宮本/近藤
大会では試合を何戦かするんですが、だんだんロボットが壊れたり消耗してしまいます。大会が進むにつれて、強豪チームと対戦することになりますが、後半になると相手チームのロボットがどんどんと壊れていったのでラッキーだったと思っています。それで「運が良かったね」って(笑)。
- でも、相手チームが壊れていったのに、同じ条件で競技してきた「Team Takahama Robots」のロボットは壊れないで決勝まで戦えたのですよね。それは、ロボットが壊れないようにふたりが何か工夫をしていたと言うことではないのですか?
宮本/近藤 毎回、試合が終わったあと、30分くらいインターバルの時間があるのですが、その時間は「ネジの緩みがないか」とか、「センサーは正常に動いているか」とか、チェックリストを作ってしっかりと確認しました。 ロボカップジュニア・ジャパンオープンでは、フォワード用ロボットの右前のモーターの回転が落ちてきたので交換しましたが、それ以外は大きなトラブルはなかったです。
■ロボットが激突する迫力のデモンストレーション
自律ロボットはまるで生きているよう・・
2台の自律ロボットが連携してゴールをめざす
ロボカップジュニアは、11歳以上19歳以下の子どもたちが参加する「ジュニアリーグ」です。サッカーリーグは、1チーム2台の自律型ロボットで競います。フィールドは122cm×183cmのカーペット地で、周囲は14cm高の壁で覆われています。ホイッスルが鳴ったらロボットは自律的に動きます。
たかはま夢・未来塾のロボカップジュニア用サッカー・フィールド
- Team Takahama Robotsは2台のロボットをどのようにフォーメーション配置していますか?
宮本/近藤
フォーメーションは1台をフォワード、もう1台をディフェンスとして縦に配置しています。縦に配置している理由は、例えば、相手ボールでキックオフした場合、前の1台はボールの位置にできるだけ速く移動し、もう1台は点数を取られないようにできるだけ自陣のゴール付近を守るためです
フォワード・ロボットは相手ボールに近付いて奪い取れれば相手ゴールに向かって攻撃に素早く移ります。ディフェンスは相手ロボットがシュートしてきたら、それを認識してボールをはじき返す動作をします。
- ロボットは自分の位置、味方の位置、相手チームの位置は理解しているのですか? また、他のチームにはフォワードを2台で構成しているようなチームもありますよね? 試合が始まってから、相手の作戦に合わせて作戦を変更することはできるんですか?
宮本/近藤
ロボットは自分たちの位置、相手の位置は正確にわかっています。例えば、フィールドのサイドライン際にいるときに、ラインに沿ってボールを前進させてもそこにはゴールはありません。その場合は、自分の位置からゴールの場所を計算で割り出して、カーブするシュートを使ってキックすることでゴールを狙うように工夫しています。
また、僕たちのチームでは、一定時間が経過すると、自動的にディフェンスも攻撃に参加するようにプログラミングして、攻撃力が上がるように設定しています。
どちらかのチームがゴールした時と、白線からボールが出た時には、ロボットに触ったり設定を変更することができます。僕たちもその間に、ゲームの状況に合わせてロボットの設定を変更することもあります。
- 設定を変更すると、どのように変わるのですか?
宮本/近藤
相手のロボットを避けてカーブしたドリブルでボールをゴール前に運んだり、ディフェンスが攻撃に参加するように設定で変更したりできます。
- センサーでは、何か工夫をしたり、やってみてよかったと感じるところはありますか?
宮本/近藤
ロボット自体がサイドライン等からはみ出るとアウトオブバウンズの反則になってしまいます。はみ出したロボットは一定時間、退場になってしまいます。そうなるととても不利になってしまうので、ラインからはみ出さないようにしようと相談しました。
その結果、プログラミングの割り込みを使ってラインセンサーの検知と判断を短かい時間ごとに行うようにしました。それによって、線から出ないように頻繁にロボットがラインの位置を確認するようになり、アウトオブバウンズの回数が減りました。それが安定した成績につながったのかもしれません。
- 世界大会出場は楽しみですね
宮本/近藤
はい。でも、コミュニケーションやインタビューがすべて英語なので心配です。英語の勉強を頑張らなきゃいけないな、と思っています(笑)。
「たかはま夢・未来塾」副理事長(ロボットクラブ担当)杉浦明仁氏に聞く
- たかはま夢・未来塾からはロボカップ世界大会の出場チームを何度も輩出していますが、どんなことが重要なのでしょうか?
子どもだけではなく、大人だけでもなく、双方が協力することでロボカップ出場の夢が実現できると感じています。子どもたちだけでは上手くできないことも、私達を含めた周囲の大人たちがサポートしてあげることで、壁を乗り越えるための工夫ができるようになります。
愛知はものづくりが盛んな地域です。両親が企業で開発や研究に携わっていたり、製造業を営んでいる家庭も多く、ロボット作りに対して親御さんも興味を持ってくれます。そういう環境にあると、子供たちも自然にロボットや科学に興味や夢を持つのかもしれません。そんな子どもたちの夢を実現するために、たかはま夢・未来塾としては、レーザー加工機等の設備を備え、環境を整えています。
- ロボカップジュニアはどのような大会でしょうか?
ロボカップはロボット技術を発展させようという学会的な要素と、それを高いレベルで実用化することが求められていると感じています。例えば、とても良い技術を持っていたとしても、大会を最後まで競い続ける実用性が伴っていないといけません。画像処理系、パワーエレクトロニクス系、機械系など、様々な専門分野の技術がありますが、ロボットはそれらを結集した総合システム工学が大切なので、各分野で一定レベルを実現しないとロボカップサッカーで競い抜くことはできないと思います。
ホイッスルが鳴って試合がスタートしてロボットが手から離れたら、例えるなら人工衛星と同じで、それまで準備してきた通りにロボットは動き、周囲の動きやトラブルにも自律的に対応していかなければなりません。
- 子どもたちが将来サイエンティストを目指してくれるといいですね
子どもたちの年代では、総合システム工学的なことをロボカップ以外ではなかなか体験できないので、ロボカップジュニアは素晴らしい機会になっています。「たかがネジ一本」と思うかもしれませんが、ネジ1本がはずれても正常な状態では競技できないのがロボカップです。
ただ、将来のサイエンティストを育成するということだけではなく、大人になってどんな仕事についたとしても、トラブルに遭遇したときに、ロボット競技に臨むまでの計画や準備、失敗したり成功したときのことを思い出したり、ロボット競技の「ネジ一本」や「線一本」の重要性を思い出してくれれば、それでも十分です。ロボカップは子供たちにとって、貴重な経験となって必ず役立つと思っています。
もちろん近い将来、自動運転や介護ロボットなど、社会の中に浸透するだろうロボット時代に、貴重な人材になっていてくれるとなお嬉しいですね。
著者・撮影:ロボスタ 神崎洋治(http://robotstart.info/)
[ プロフィール ]
宮本圭佑さん(みやもと けいすけ) 中学二年生
近藤諒歩さん(こんどう りょうぶ) 中学一年生
「たかはま夢・未来塾」ロボットクラブ所属
Team Takahama Robots
2016年11月
ロボカップジュニア高浜ノード大会
サッカーワールドリーグ ライトウェイト 優勝
2016年12月
ロボカップジュニア東海ブロック大会
サッカーワールドリーグ ライトウェイト 準優勝
2017年3月
ロボカップジュニア・ジャパンオープン2017
ぎふ・中津川
サッカーワールドリーグ ライトウェイト
優勝(ジャパンオープン出場64チーム)
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