RoboCup2017 Nagoya Japan

RoboCup2017 Nagoya Japan(ロボカップ2017)

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ロボカップ2017名古屋世界大会 開催報告書

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ロボカップ2017名古屋世界大会 レポート

20年ぶりの名古屋開催

ロボカップの第1回大会は「2050年までに、サッカーのワールドカップ・チャンピオンにロボットで勝つ」という壮大な目標を掲げ、1997年に名古屋で開催された。それから20年を経て、大幅にスケールアップし、今年名古屋で凱旋しての開催となった。

大会には世界42ヶ国・地域から約3千人の研究者や学生が参加した。来場者は約13万人。会場はポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)と武田テバオーシャンアリーナ。広大な敷地で行われたが、来場者が、会場内で迷ったり戸惑うことがないよう、ピンク色のビブスを着た多くのボランティアが会場やその周辺に案内役として配置された。

ロボカップ運営を支えるボランティアの皆さん

ロボカップは社会に役立つイノベーションが生まれる空間

ロボカップは競技大会といっても、最も重要なことは「勝つこと」ではない。ロボット技術の研究と開発によって、次世代に繋がる新しいイノベーションやその種を生み出したり、社会に貢献するための技術を競技という形式を通して披露する場となっている。その思想は参加者ひとりひとりに染み渡っている。

競技種目はサッカーに限らず多岐にわたっている。代表的なものはやはりロボカップサッカーだが、人型(ヒューマノイドリーグ/標準プラットフォームリーグ)と、車輪型(中型リーグ/小型リーグ等)がある。中型リーグと小型リーグは車輪を持った専用のロボットを使い、いかに高度なサッカーをするかという点にフォーカスしている。スピード感があり、ロボット同士の連携プレイも楽しむことができた。

サッカー中型リーグ

決勝日のスタンドは超満員の観客で埋めつくされ、多くの声援が送られていた。中型リーグはチーム「Water」が、小型リーグはチーム「SRC」が1位を獲得した。日本からも数チームが参加したが、残念ながら好成績をおさめることができなかった。

サッカー小型リーグ

中型リーグでは、優勝したチーム「Water」の自律ロボットと人間による10分間のエキシビジョンマッチが行われた。ここ数年、毎年行われているもので、結果は3-1で人間の勝ち。まだまだ人間の方がサッカーは上手いようだが、ロボットも1ゴールを決め、勝利するのもそう遠くはないようだ。

ヒューマノイドリーグは声援と笑顔が溢れるファイナル

一方、ヒューマノイドリーグは二足歩行ロボットで行う。ロボットのサイズによって、130~180cmのアダルトサイズ、80~140cmのティーンサイズ、40〜90cmのキッドサイズの3つのサブリーグがある。

アダルトサイズ

キッドサイズ

現在の技術ではロボットは歩くのが精いっぱいで、ボールを蹴るとバランスを崩して転倒することも多い。ボールを見つけるだけで数秒間以上かかり、観客のバッグの模様をボールと勘違いして観客席に向かって歩き出すほど。それでも少しずつだが毎年、進化を続けているし、運営側も敷居を上げ続けている。数年前まではロボットが認識しやすいようにボールはオレンジ色に塗られていたが、人間がサッカーで使っている公式球が用いられるようになった。また、フィールドは歩きやすいカーペットから人工芝に変更された。人工芝は今の技術ではロボットにとって歩きにくい素材だが、あくまで目標は将来、人間とサッカーをすること。そのステップとして確実に難易度を上げていっている。

実際の競技では、ボールを見つけて近寄っては転び、相手とぶつかっては転びと、おそらく観客が当初イメージしたようにはロボットは動いてくれない。見ているとイライラする、という人も多いかもしれない。しかし、会場の雰囲気は全く異なる。歩くだけで転んでいたり、ボールを見つけられずにウロウロするロボットに大笑いしていた子どもたちも、嘲笑していた大人たちまでも、そんなロボットが転倒しながら蹴ったボールがゴールにゆっくりと入った瞬間、大きな歓声をあげ、その歓声はどよめきとなってホールに響き渡っていた。

ティーンサイズ

キッドサイズはチーム「Rhoban Football Club」、ティーンサイズとアダルトサイズの2冠をチーム「NimbRo」が獲得した。地元日本から出場した千葉工業大学のチーム「CIT Brains」がキッドサイズで3位に入り、「Kid-Size Technical Challenge」(規定競技)では1位に輝いた。

参加者側のいくつかが今年導入した技術が「ディープラーニング」というAI関連の機械学習技術だ。カメラの認識の精度が格段に向上する可能性がある。チーム「CIT Brains」はNVIDIA社の小型のAIコンピュータボードを搭載して競技に臨んだ。

サッカーリーグではソフトバンクロボティクスの「NAO」を使った標準プラットフォームリーグも人気があり、多くの観客が詰めかけて声援を送った。日本勢はサッカー競技では惜しくも入賞できなかったが、対象者限定の標準プラットフォームリーグチャレンジシールドで、愛知県立大学のチーム「Camellia Dragons」が1位で表彰を受けた。

スタンダードプラットフォームリーグ

また、コンピュータ上の仮想フィールドで行われるサッカーシミュレーションリーグも熱い戦いが繰り広げられ、2Dシミュレーションリーグでは福岡大学と大阪府立大学のチーム「HELIOS2017」が1位、サッカー3Dシミュレーションリーグでは福井工業大学のチーム「FUT-K」が3位に輝いた。

ロボカップジュニアは19歳以下が参加する大会だ。サッカー、レスキュー、オンステージが開催され、この中から将来のロボット産業をリードする人材が誕生するのでは、と期待させてくれるのに十分な、ロボットへの熱意を感じる競技を繰り広げていた。オンステージは自由な発想を披露する場となっていて、STEM教育にアートの「A」を追加したSTEAM教育の発展に寄与しているようだ。

ジュニア・サッカー

オンステージ

家庭で、災害現場で、産業で活躍するロボットの未来

サッカー競技以外ではまず、トヨタ自動車のHSR(Human Support Robot)やソフトバンクロボティクスのPepperなど、生活支援ロボットで競う「ロボカップ@ホーム」が注目を集めた。特にHSRを使った「ドメスティックスタンダードプラットフォーム」では九州工業大学のチーム「Hibikino-Musashi@Home SPL」が1位、玉川大学のチーム「eR@sers」が2位となり、日本勢が1〜2位を獲得する快挙を達成した。

レスキューリーグは悪路もある災害現場を想定したフィールドを、半自律または操縦によってロボットが移動し、内部の状況を撮影したり、要救助者を探索する競技。実際にロボカップで優秀な成績に繋がった技術が福島第一原発の内部探索ミッションなどで活用されているため、レスキューリーグは日本にとってとても重要な競技だと言える。イランのチーム「YRA Islamic Azad University of Yazd」が1位を獲得。日本は京都大学のチーム「Shinobi」がファイナルに進出したが惜しくも敗れた。しかし、「Best in Class Dexterity賞」を受賞した。

ロボカップレスキュー

ロボカップインダストリアルは、ドイツ政府が主導する第4次産業革命と言われている「インダストリー4.0」の思想を競技に反映したものだ。複数の移動式ロボットが連携し、多数の部品供給・製造・加工機械を自律的にめぐって指定された製品を作り、最終的には物流センターに納品するという設定だ。ドイツ語圏のチームが圧倒的な強さを見せつけた。

ロボカップインダストリアル

会場は親子連れで賑わう

夏休み期間の開催だったこともあり、会場では親子連れの姿が多く見られたのが印象的だった。スポンサー企業等による展示ブースでは、既に生産・販売を終了しているがロボカップの競技ロボットとしても使われていたソニーのペットロボット「AIBO」(アイボ)や二足歩行ロボット「QRIO」(キュリオ)を展示。その他、トヨタ自動車が「HSR」、NTTドコモが「鉄腕アトム」等を展示し、子供たちにも大人気だった。

また、三菱電機が綿菓子作成ロボットを展示。普段は無骨な産業用ロボットアームがエプロンを着用し、子供たちのために綿菓子を作る様子は微笑ましかった。

圧巻だったのは重さ推定約17トン、全長11mもの巨大カブトムシロボ「カブトムRX-03」。動くロボットに乗れるとあって親子連れによる長蛇の列ができていた。そのほか、動作拡大型スーツ「スケルトニクス」のデモも行われ、子供たちが魅入っていた。ロボカップはこれらイベントやジュニア大会等を通じて、サイエンティストを目指す子供たちとロボットが出会い、触れあう良い機会になっていた。

カブトムRX-03

次回のロボカップはカナダのモントリオールで開催される。ロボットや人工知能への感心が世界的に高まる中、技術革新と飛躍への情熱が次の世代へと受け継がれていく。

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